ロスト・ワールド

ひまだから天井見ながらあれこれと思い出していた。

実家を出て、初めて一人暮らしをしたときにはラジオしかなかった。

そのFM放送でジャズとか聴いて、ステレオで聴きたくなってアルバイトで貯めたカネでレシーバー(アンプとチューナーが一体化した機械)とヘッドフォンを買った。

たしかYAMAHAだったような気がする。

それからレコードプレーヤー(ナショナルのテクニクス)とスピーカー(三菱のダイヤトーン)をつないだ。

オープンリールデッキも欲しかったんだけど安アパートではボリュームを上げることもできないし、FMレコパルという雑誌を眺めて楽しむだけだった。

あのころだった、ホンダがシビックを出し、トヨタがセリカを発売した。

世の中、いけいけドンドンだったし、実際に日本製品は完成度を高めていた。

考えてみると、実家のモノクロテレビがカラーに代わったのは東京オリンピックの後だった。その後でテレビ電波がUHFとVHFに分かれたことから、テレビのチャンネルダイヤルが二つある機械に代わった。

あれからずっと実家はそのカラーテレビを使っていた。だから機械製品が壊れるなんて想像もしていなかった。とにかく日本製の機械は絶対に壊れなかった。

壊れても、町の電気屋さんとか自動車整備工場のおじさんたちが必ず直してくれていた。

そうした日本で生まれ、そうした日本で成長した。

(このブログを読んでくださる方の何割かは、うんうんとうなづいていることだろうと思う)




ところが私が社会人になって、仕事関係で出会った人の中に塗料メーカーの研究員がいた。

どこの誰とは言えないが、居酒屋で聞いた彼の話が衝撃的だった。

彼は言う。

「私んとこでは沖縄県のある島に研究所を設けていて、いかに計画通りに塗装が壊れるかの研究をやっています。一定期間の間は絶対に塗装が剥げないのに、一定期間を経ると急速に破壊される塗装にしなければなりません。でなければ買い替え需要が生まれないからです。この研究が完成すれば、いろんなメーカーからの受注に成功するんです」

クルマにしても家電製品にしても、家具や建材やあらゆる分野に言える話で、この情報にはノックダウンさせられた。

錆が出てきたクルマや冷蔵庫はみっともない。買い替え需要のために、わざと一定期間でダメになる塗装を施すのだと言う。

「ああそうか、奈良の法隆寺は千年以上も残っているのに現代建築の日本家屋は50年もたない。それに対してウイーンの都は石造り建築が昔ながらに残っている。商業主義の違いなのか」

もっとも、地震や台風などの自然災害が多い日本では、作っては壊すという「スクラップ・アンド・ビルド」のサイクルが早いからなのかも知れない。

しかし、それにしては手元のSONYのポケットラジオが動かなくなった。

製造元はSONYなのだが、どうやら海外の工場で製造されたものらしく、知人の話では「基盤のハンダが浮いてるんじゃねぇか?」だそうだ。

そうだとすれば、なかなか故障原因が見つからなくて、家電量販店などは「新しいものに買い替えたらいかがですか? お安いのがありますよ」と来るらしい。

むかし聞いた話だと、放送局で導入される機器のほとんどがリースなのだという。その理由は、新品のうちは良くても数年たつと劣化が始まるので、さっさと中古で手放すのだそうだ。

そう言われてみると、これまで中古車を買ってどれだけ修理費をかけたことだろう。

なるほどね、そういう仕組みになってたのか。

と言うよりも、日本の製品が品質を重視する時代は、とっくの昔に終わっていたということでもあるのかも知れない。




古いスカイラインとか117クーペが町なかに走っていることがたまにあるけれど、中途半端に古い20年選手くらいの中古車って、見かけないもんね。

最終期のサニーとかプレリュードとか、見かける?




スポンサーサイト
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR