粋な花見

その公園にはベンチが四つある。

公園と言っても遊具があるわけでもないただの空き地だ。

夏休みになると近くの子供たちがラジオ体操に集まる場所だ。

ふだんは老人クラブの人たちがゲートボールをやってたりする。

今日も三つのベンチは地下足袋姿の翁と媼で埋まってる。

誰が植えたか桜の木が3本だけひっそりと生えている。

あまり手入れはされてなさそうで枝ぶりも貧相だが、いっぱしに花を咲かせている。

ご馳走を持って花見に来るほどのものではないが、ベンチに腰かけて見上げながら、そよ風に吹かれる分にはちょうど良い。

ボディバッグに入れて来たステンボトルのほうじ茶をカップに注ぎながら、頂きものの「かるかん」の袋を開く。

鹿児島や沖縄のお菓子はやたら甘いのが少なくないが、山芋で作られた「かるかん」は上品な甘さで私の好みに合っている。しかも季節限定なのか桜色になっている。

「こんにちは」

見知らぬおじいちゃんが声をかけてくる。

「となりに、よろしいかな?」

この公園の常連なのだろう、私の方が滅多に来ないからだ。

「咲きましたなぁ」桜を見ながらひとりごとのように彼は言う。

横に座り、ステッキを足の間に立てて両手を重ねる。

「八重桜、のようですね」と私。

「そうそう、けっこう長く咲いてるんだよ」

「あ、よろしかったら一ついかがですか」かるかんを差し出す。

「ありゃ、まんじゅうかと思ったらかるかんか、こりゃなつかしい」

「お茶もどうぞ」

「あんたはこの辺の人かな?」

「ええ、この坂の途中に住んでます。でも滅多にここまで登って来ないんですよ。無精者んだから・・・」

ひよどりが飛んで来て、桜の花にくちばしを突っ込んでいる。

ここ数日肌寒かったのだが、今日の風は気持ち良い。

「風さそう花よりもなお我はまた・・・」私が言いかけると老人が「春のなごりをいかにとやせん・・・内匠頭ですね」

「や、ごちそうさん」そう言い残して去って行った。




花見はこれくらいがちょうど良い。

暑苦しいのは粋じゃない。




スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

おはようございます

来年のさくらも楽しみ。
あ、今年まだお花見してなかった。
あずきバー持って、さくらに会いに行ってきます。

うづらどの

花見にあずきバーでは寒かろう。ほれ、かるかんとほうじ茶。それともワンカップ大関?
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR