純米大吟醸

「こっちのチョコが良いんじゃね?」

となりのせがれが杯(さかずき)を持って来た。

「ああ、猪口か。シャレが効いてるじゃねぇか」

4合ビンの冷酒をたずさえている。

「おふくろが持ってけってさ」

「じゃぁチョコの発案者はお母さんなのか?」

「ちがうよ、猪口はオレのアイディア。デパートで京都物産展をやってたから買ってたんだ。酒は田舎から送って来たの。オジサンにやれって」

「どうして知ってるんだ?」

「正月に認定試験の話になって、オジサンのことを言ったのさ。馬肉をくれた叔母さんだよ」

「馬肉ってか、馬刺しね・・・」




持って来てくれたのは純米大吟醸の「青煌」という日本酒である。

アルコール度数は18°とドライだ。

ネットで調べたところ、純国産の美山錦を使用し精米歩合は65%とある。まぎれもない本物の清酒だ。

こういった当たり前のことに感激しなければならない時代は、考えてみれば悲しい。

九州クボタの社員が廃棄物処理法違反に問われたのは2014年のことだった。

コイン精米機から出る糠(ぬか)の中に精米機からこぼれたわずかな玄米が混ざっている。

これを適切に廃棄することなく酒造メーカーに売っていたというものである。

廃棄物処理は認可された業者でなければできない規則になっていて、この社員は小遣い稼ぎの軽い気持ちで数年にわたってやっていたらしい。

農業地域のコイン精米機は結構な台数で、この廃棄物玄米も相当な量になっていたらしい。

コメはコメだから「もったいない」という評価をする向きもあるだろうが、ゴミはゴミなのだ。だから廃棄物処理法という法律ができている。違法は違法なのだ。

ココイチのビーフカツと同じことが数年前からおこなわれていた。




戦後の日本人は軍備を禁止されたことから経済復興に集中した。

その結果として「正しさ」とか「正直さ」といったものをかなぐり捨てて「金儲け」に邁進した。

「正直者がバカを見る」社会を一生懸命に築き上げたわけだ。

「良い仕事をして優れた物を作れば正しく評価される」といった日本人の美徳はゴミ箱に捨てられた。

いかに人を騙して儲けるかということに頭を使った。

八百屋や魚屋が並んだ商店街が消え去り、大型スーパーやコンビニが急激に増えた。

それらは極限まで利益を追求したために、あらゆる農薬や添加物などを駆使して商品開発を進めた。

海苔を販売する際はどこの原産なのかを表記しなければならないが、海苔弁当にしてしまえばどこの海苔を使っているかは公表しなくても良い。

「中国産や韓国産と書けば売れない」といった食材は、加工食品に回すだけで良い。あるいは外食産業に流すかだ。

魚の養殖は生産効率を上げるために様々な抗生物質などをじゃんじゃん与えているという。養殖フグの殺菌のためにホルマリンを浴びせていた業者もいた。

日本向けにサーモンを養殖しているノルウェーでは、国内法の規制を大幅に超える薬物を投与しているとか。

南米の女の子たちの初潮が早くなっているという。食肉用の家畜に成長ホルモンを投与しているかららしい。

養豚業者が全国的に豚の出産量が減ったと言って問題になった。

調べてみると豚の餌に期限が切れたコンビニ弁当の廃棄物を利用していたことが発覚した。大量の合成添加物が出産率を下げていることがわかった。

しかし豚の餌ならまだ良い。人間相手に販売するようになった。

それがミートホープであり船場吉兆であり赤福だった。

今回のココイチ騒動はそれらが氷山の一角だということを示している。どこにでもここにでもある話なのだ。

昨日期限切れになった食品がいきなり悪いはずがない。逆に延々と腐敗しないような防腐剤をたっぷりと使っている食品の方が危ない。

そして、こうした無責任企業が尻尾を出していた時代がやがて終わろうとしている。ネット情報が新聞報道を上回り始めたからだ。

でもこれってどういった「変化」なのか? たんなる「正常化」ではないのか?




純米大吟醸の「青煌」を見ていてつらつら考えた。

そんなに有難がることではなく、コレが当たり前なのかも知れないと。

当たり前の物が当たり前の評価を受ける時代が早くやって来てほしいものだ。

まだ陽は高いけれど、ちょっと味見をしてみよう。へへへ。




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