プロフェッショナル「仕事の流儀」

私が現役だったころ、建築関係の仕事をしていたことはすでにお知らせした通り。
しかしこの分野は見事に細分化されていて、鉄骨やコンクリートやレンガだけでも一生をかけるほどの深みがある。
四国大橋を見たり東京駅を見るだけで、その技術力に圧倒されてしまう。

だから私はどれひとつとっても完成した知識を持っていない。
勤め先の言うがままに部署を転々とした。
鉄のこともコンクリートのことも木材のことも、上辺を触ったに過ぎない。
深みを掘り下げた分野は何もない。

たまにホームセンターなどで、イソ(ISO)ネジとミリネジの違いを聞かれた店員が困っていると横から口出しすることはあるし、鉄骨住宅に住む人がシロアリ業者から騙されそうになったら助言することはある。
しかし私は本物のプロではない。
すべからく中途半端なのだ。

ある日、親戚の子供から質問された。
「ねぇ叔父さん、材木を乾燥させるのにどうして水に浮かべるの?」
「それはね、材木の中にある水分は水に溶けるからなんだよ。邪魔なものが溶けたら早く乾燥できるんだ」
「どうして?」
「目薬を思い出してみな。水道の水で目を洗うとゴロゴロするだろう? でも目薬だとそんなことがない。浸透圧と言うんだ」
私が答えられるのはここまでが限界。
それ以上突っ込まれると、ギブアップになってしまう。

当時はまだ、自由水と結合水のことも知らなかった。
含水率というものがあって、木材が反ったり割れたりする境界線になるという。
全部木工業者の課長からレクチャーされた。
柱なら20%以下、敷居は18%以下、床板は15%以下だと教わった。
そんなことを知る社員は誰一人いない。
すべてが独学だった。

自分の限界を知るということは、謙虚さにつながるし偉そうにしなくて済む分だけ気が楽だ。
ただ、人の健康や生命に関わる仕事をしている人がいる。
そんな人は中途半端では許されない。

最近、住宅のクレームが増えているという。
新築物件が数年でおかしくなるのだそうだ。
建具の開け閉めが狂ったり、床が傾いたり。
この国からどんどんプロが消えている。
長引いた不況のためにリストラが進んで、高額なサラリーを取るベテランがどんどん職場から駆逐されていった。

あちこちの工事現場でクレーンが倒れる事故が多発していることはここで何度も指摘した。
トラック事故や長距離バスの事故。あるいは鉄筋本数をごまかしたビル建築。

先日はどこかの病院で、腹腔鏡手術で死亡者を出していた医療者が摘発されたし、この国からプロフェッショナルは急激に消えている。
失業者が増えるとタクシードライバーになるとか。
大丈夫ですか、そのタクシー。

文部科学大臣は、本当にプロなんだろうか。
早口になる総理はいませんか?



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