三本目の矢の行方

日本経済は、金融緩和による円安誘導で景気が持ち直したかに見えた。株価も上がった。大企業に絞って言えば賞与も増額され、今年の労使交渉ではベアを獲得した労組も多かった。
しかし全国民が恩恵を受けているわけではない。
株価が上がったというのも、年金機構が株式市場に回す運用率を増やしたからでしかありません。
自民党の選挙対策だったのです。選挙のたびに株価が上がる。「三本の矢」に期待しよう、と。
年金機構の原資なんて、見方によったら国民の積み立て貯金ですからね。
その虎の子を、外資という魑魅魍魎が闊歩する株式市場に投入している。ハイリスク・ハイリターンの世界に。
上海市場がどうなっているかは誰でも知っていることですよね。
もうひとつは「ポートフォリオ・バランス」
日銀が量的緩和を行うことで、金融機関が保有していた国債が日銀に買い取られ、現金が銀行へ入って来る。しかしまだ有力な借り手はいない。勢いそれらの資金は証券市場に流れ込む。
株価は自動的に上がり、あたかも安倍政権の経済対策が正しかったかのような錯覚を国民に与えてしまっている。

円安ということは、輸出に頼る企業には有利な話なんだが、実際のところ不良債権の処理を加速させるためにアメリカから内需拡大を迫られて、輸出企業の多くは海外生産に移った。
そのため日本国内で生産して輸出に回すという企業は昔ほどには多くない。
メキシコあたりで自動車を組み立ててアメリカで売る。為替変動の影響はほとんどない。

かえって円安による輸入コストの増大で、食品から製造原料、あるいは燃料費などといったほぼすべての物が値上がりを見せた。
つまり、商品価格を上げるか容量を少なくするかという生き残り作戦を採らざるをえなかったわけだ。
たとえば私が好きな「ベビーチーズ」はかつて5個入りだったものが、値段そのままで4個入りに代った。実質的な2割の値上げということになる。
昨年の夏に買った殺虫スプレーを途中まで使った上で、肝腎な時になくなってはいけないと、予備のスプレーを買っておこうと思いドラッグストアへ行った。
新しく買って来た同じ(はずの)商品は、昨年超しの途中まで使ったものと同じ重さだった。

かくして世の中の様々な商品が容量を少なくしていった。

ところがである、最近になってはたと気が付いた。
様々な商品が「増量」しているのである。
菓子類、洗剤、家庭雑貨、加工食品、飲料水、インスタントコーヒーなどほとんどの商品が増量している。
ほとんどが10%程度だが、丸美屋の『たらこふりかけ』に至っては20%の増量になっている。

いつの間にか「減量」が「増量」に切り替わった。
なぜだろうかと考えた。
おそらくだが、消費税が8%になったことがきっかけではなかったか。
製品そのものは従来通りの作り方をメーカーはやっているだけなのに、消費税が上がっただけで消費者の購買意欲が減退した。そこへ持って来て円安だ。
輸入コストが上がると、製造原価を直撃する。
しかし値上げする余裕はない。消費者からますます背を向けられるからだ。

泣く泣くメーカーは値段据え置きに出るしかなかった。
従業員の給料を上げる余裕などあるわけがない。
氷山の一角のように円安の恩恵を受けた大企業は、安倍政権の要求によって給与を増やした。
経常利益を人件費に回した分、関連企業や下請け会社などに利益が回らなくなってしまった。

だから製品を「増量」する余裕なんてないはず。
大企業だったらわからなくもないですよ。花王とか資生堂とかね。
でも、およそ体力がなさそうなメーカーまでが「増量」している。
これね、ただ中身を増やすだけじゃない。
例えば十六茶が増量されてるんだけど、PETボトルそのものを大きくしなくてはならない。消費者にしてみれば飲んだら捨ててしまうだけの容器までコストをかけてサイズアップしなければならない。
なんでそんなことするの? だったら小売価格を下げれば良いじゃん。

はい、そこに答えが隠されているような気がします。
消費税率は上げるけど、小売価格を下げてはダメだと言ったのは政府でした。
そして黒田日銀総裁は「緩やかなインフレ傾向にあるが、目標とする2%にはまだ達していない」として、更なる「質的・量的金融緩和」という黒田バズーカ砲をぶち上げた。
経済学の基礎の基礎なんですが、物価が上がることで労働者の収入が増えて、購買力が増し、そのことで市場経済が発展することを目指しているんですが、消費税を上げたことで景気に冷や水をかけたのではありませんか?

円安によって製造コストの上昇を招いたから、中小零細企業の体力は一気に消耗してるはず。
消費者動向が低迷するものだから小売業界までが生き残りに必死になっている。
すでに巨額の赤字決算をやったマンモス小売店もあるくらい。

本当なら値上げしたいところなのに各社が「増量」しなければ商品が売れない。
これ、早い話が「インフレ」とは逆の「デフレ」ですよ。
確かに日銀や政府が「消費者物価」のことばかりを言うものだから、値下げはできない。
だから「減量」に走っていた日本企業が、今度は「増量」に走っている。
実質的な値下げですよ。

黒田日銀の「インフレ・ターゲット2%」というのが、消費増税によって見事に失敗しているという何よりの証拠だと思いますよ。
ウソだと思うならスーパーに行って商品を御覧なさい。過半数の商品が「増量」して売られています。
日本の市場経済は失敗に終わって、またデフレという長い冬の時代を迎えるでしょう。

ただ、一昨年あたりまでのデフレはまだ良かったんです。円高だったから。
輸入品が安く買えて、製造原価も低く抑えられていた。
個人所得は伸びないけれど、物価が安く抑えられていたために家計の出費も抑えられていた。
輸出企業こそ大変な目に遭っていたけれど、庶民生活はけっこう円高で救けられていたんです。
しかし今では円安でしょ? このままデフレを迎えると大変なことになりますよ。

安保法制で安倍政権の支持率は下げ止まる気配がないんですが、経済対策が失敗に終われば、案外と現政権の寿命は短いものに終わるかも知れません。
維新の会の橋下さんの動向が気になるところではありますが。

さて、再稼働を目指す原発はどうなって行くのでしょうか。
アメリカ主導のシェールオイルが予想通りの成果を上げていないことがはっきりしたので、原油価格はそのうち上昇しますよ。電気料金にすぐ反映するでしょう。製造コストに直結するのだから零細企業がばたばたと倒れる光景が目に浮かぶ。
そして被雇用者は残業代が支払われなくなり、非正規社員が増加する。これらは選挙で選ばれたわけでもないいち民間企業の意向が強く反映されている。
だから労働者の所得は増えようがない。増えるのはブラック企業と呼ばれる職場。それが合法化しようとしている。

私は政権批判をしているのではありませんよ。事実を積み重ねているだけです。



皆さん、ご機嫌よう。




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