産経が九電を擁護する

産経新聞が九州電力のことに触れていた。
九州には有人離島が102あり、全国の4割を占めているという。
離島には海底ケーブルで配電しているが、発電所から延びる送電線も含めて、そのメンテナンス作業に支障が出ていると言われているらしい。
九電が保有する送配電線は合計すると売り上げ規模で倍近い関西電力や中部電力より長い。
このインフラの維持費が危機に瀕しているという。
何故か、佐賀と鹿児島にある原子力発電所が稼働していないためらしい。

九電が支出するメンテナンス費用は、年平均1900億円だとされており、中規模の自治体の一般会計を上回っているという。
つまり売り上げベースで言えば関電や中電よりも小さいマーケットしかもたないのに、維持管理しなければならない設備はそれらを上回っている。
しかし福島第一原発の事故を受けて、再稼働が遅れている。
そのために赤字に転落した九電は、維持費の削減を余儀なくされていて、平成24年から26年までの3年間で2000億円が削られたというのである。

保守はおろか修理交換しなければならない物件が優先され、スケジュールがどんどん先延ばしになっているという。
鉄塔などの送電設備や変電所などの老朽化も先送りされることから、いつ停電事故が発生するか背中合わせの状態だとされている。

つまり何が言いたいのかというと、原発の再稼働さえ得られれば、順次先延ばししていたメンテナンスが進められますよという、「人質問答」でもあるわけだ。

現場の作業員の人々のご苦労は推察できるし、夏に向けての電力需要を維持するためには相当な努力が必要であろうことも理解できる。
何が何でも再稼働反対とは言いたくない。
しかし、原発再稼働を急ぎたいあまりに、見え透いた小細工が成されていないか。
例えば大分の新大分発電所の1基(24.5万kw)、熊本の苓北発電所1号機(70万kw)、福岡の苅田発電所1号機(36万kw)、長崎の松浦火力発電所でも発電用タービンの落下事故など、トラブルが続出している。
うがった見方をすれば、「だから早く原発を再稼働させましょう、困るのは皆さんですよ」とでも言いたげに聞こえて来そうなのだ。
メンテナンス作業にしても先の見えない「先送り」はしているが、原発さえ再稼働させれば問題は解決するんです、と言いたげにも聞こえる。

なぜそこまで疑ってかかるのかと言うと、九州電力は佐賀の玄海原発の再稼働問題において「やらせ公聴会」を開き、古川前県知事と密かな接触があったことが暴露されている。
こうした反社会的な前科があればこその疑念が浮かび上がるのだ。

そこへ来てこのようなデータがある。
北から見て行く。左側の数字が燃料プールの容量。中間が貯蔵量。右側が貯蔵率である。(2012年9月現在)

■北海道泊   1000: 400:40%
■青森東通   440: 100:23%
■宮城女川   790: 420:53%
■福島第一   2100:1960:93%
■福島第二   1360:1120:82%
■茨城東海第二 440: 370:84%
■静岡浜岡   1740:1140:66%
■新潟柏崎刈羽 2910:2380:82%
■石川志賀   690: 160:23%
■福井敦賀   860: 580:67%
■福井美浜   680: 390:57%
■福井高浜   1730:1160:67%
■福井大飯   2020:1430:71%
■島根     600: 390:65%
■愛媛伊方   940: 610:65%
■佐賀玄海   1070: 870:81%
■鹿児島川内  1290: 890:69%

ちなみに青森の六ヶ所村再処理施設のキャパシティは2,963tに対して貯蔵量が2,800t、貯蔵率は94.5%でほぼ満杯状態だから、他施設からの搬入はできない状態。
しかも使用済み燃料棒は崩壊熱を出し続けるので、原発が停止中でも循環冷却は続けなければならない。
その電力は?
はい、石油火力や石炭火力です。

上記の数値を見てみると、大きな施設ほど貯蔵率が高い傾向にあるようで、
福井の高浜は余裕がありそう。
九州にしても玄海はすでに80%を超えているから、再稼働の可能性は川内に譲るしかなさそう。
活断層だとか火山の存在だとかいった地質学の専門家が議論する世界の話なんだが、実際の燃料プールの空き容量がどれくらいあるのかは、誰にでもわかる話。
それと原子炉の築年数だね。
こうした具体的な比較をしないと、ただ「赤字だから動かしたい」「危ないから止めさせたい」と言い合っているうちは先に進まない。

それと、再稼働したとして何台の原子炉が動くのかによってプールのキャパシティの埋まる速度が違って来る。
九電で言えば玄海は「あと3.4年」と言われているのに川内は「あと8.8年」。
上記で「優秀だ」としていた福井の高浜にしても「あと5.7年」。
日本一の大規模な原発である新潟の柏崎刈羽に至っては「あと3年」分しかキャパシティが残っていない。

日本は使用済燃料棒の再処理をフランスとイギリスに委託してきた。
フランスとの契約は終了していて、高レベル放射性廃棄物のガラス固化体は1310本が返却された。イギリスからは2010年から10年かけて850本が返って来ることになっている。
300m以上の地下に埋設することになっているが、その候補地は決まっていない。
こうした廃棄物の問題が何ひとつ解決されないまま、ただ電力事業者が赤字だからという理由だけで先へ進んで良いのかという疑問はある。
それも漠然とした不安などではなく、具体的な数字が出ている問題なのだ。

シビア・アクシデントが起こったら、非難経路は確保されているのか、断層は動くのか、火山はどうだ、津波はどうだ。言い出せばキリがない。
しかし実際問題として使用済み燃料棒をどうするのかは今すぐにでも答えを出す必要があるだろう。

私は基本的に再稼働は反対ではない。
ただ、諸問題が解決されるまでの時間稼ぎでしかないことははっきりしていて、施設が若い世代であり、保管庫のキャパシティがある程度確保されていて、この時間稼ぎの間に有効な次世代エネルギーを構築すること。
これに尽きるんじゃないかな。
間違っても40年寿命説を覆させてはいけない。
それは詐欺であり犯罪なのだから。

どうも今日の産経新聞を読んでいると、強い違和感を覚えてしまった。
電力会社が赤字を出していて、送電設備がボロボロになりかけているなんて、人質誘拐犯の片棒を担いでいるようにしか読めなかったのだが。


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