寿命

やぶ医者が言っていた。

多くの哺乳類に共通しているのは、一生の間に打つ心拍数がほぼ15億回なのだそうだ。

ネズミにしてもアフリカ象にしてもそこは変わらないんだとか。

確かに小鳥を手の中に入れると、鼓動がとても速くて早鐘のように打っている。

まだ象を手の中に入れたことはないが。

「ムツゴロウさんの動物王国」が放送されていた頃、彼が言っていたことを思い出した。

「馬場(ばんば)レースなどに出るようないわゆる『使役』動物は短命なんですよ」と。

「だから犬ぞりを曳く犬たちも、あまり長生きしない」のだとか。

動物の寿命とは一生の心拍数と関連があるらしい。

ところが人間だけが例外になっているとやぶは言う。

「およそすべての哺乳類を例にとれば、人類だけが異状になっている」のだとか。

どういうことかと聞くと「15億回が一生分の心拍数だとして、人間に置き換えると50歳に達しないのだ」と答える。



「計算してみるか? オヤジ、電卓を貸してくれ」

仮に1分間の脈拍を60としよう。安静時に近い。

60を60倍すると1時間の脈拍数が出る。3,600だ。

すると1日が24倍だから 86,400。

1年は365倍だから 31,536,000。

電卓の桁数が足りんから1000を切って15億を150万に置き換えて、31,536で割ってみる。

するとほら、47.56 。

つまり50歳に満たない段階で15億回の心拍数を超えるわけだ。

織田信長が言っていたことは本当だったのだよ。

しかも奴らサムライは激しい殺し合いをやるから、とても安静時の脈拍になれるはずがない。

人類を他の動物と同じレベルにすると、運動したり労働したり戦ったり逃げたり恋したりして心拍数の残高が切れるのはそうさなぁ、40代の初めってところか?

「それって女性で言う、出産の限界ってことになる」と私は言った。

「おめぇ今日は冴えてるな、良いところに気が付いた、誉めてつかわす。動物は何のために生きているかと言うと、子孫を残すためだ。だから生殖能力が落ちれば、それ以上生きててもムダだと言うことさ」

「ところが人間だけが例外に?」

「うん、そっちの専門家ではないから詳しい理由はわからんが、人間だけは生殖以外の目的があるらしい」

「人生の深み・・・とか?」

「そこまで言わせるな、こそばゆくなっちまう」

二人のくたびれた初老の男が、小汚い酒場の隅でこんな話をしていました、とさ。


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