映画のこと

もう最後に映画館に行ったのは何年前だったろうか。
コンプレックスになった頃には卒業していた。
最後に女房どのと観たのは、はて何だったろうか。
『インディペンデンス・デイ』だったろうか。それとも『デイ・アフター・トゥモロー』だったろうか。何かそんなジャンルだったと思う。

しかし映画館通いで育った私は、いろんな思い出がある。



二十代だった頃、当時つきあっていた女性と『悪魔が来たりて笛を吹く』という横溝正史のミステリー映画を観に行った。
そこで、劇中で最も恐怖が高まる場面で停電が起きた。
当然スクリーンは真っ暗になり、天井の照明も消えた。
客席のあちこちから「キャーッ」という女性の悲鳴が相次いだ。
私の連れはけなげにも大人しくしていたが、突然私の耳元で「ギャーッ!!!!!」と叫び声を上げた。
どうしたのかと振り向くと、映画館の職員たちが、一列になってローソクを持って入って来たのだ。
それはもう、お化け屋敷の怖さではなかった。



建築工事で出張した先で日曜日になった。
同じ現場で作業をしていた若者が、休日はどうするのかと聞いて来たので、「つきあおうか?」と答えた。
彼はうれしそうに「観たい映画があるんです」
連れて行かれたのは『E.T』だった。
まぁ良いかと思って隣り合って席についだが、見回すと子供連れの親子ばかりだった。
やがて映画が始まった。
後ろの席の子供が、「このあとこうなるんだよ」と解説してくれる。その解説は映画が終わるまで続いた。
あの子はきっと将来、映画評論家になっただろう。



帯広に居た時だ。
『八甲田山』という映画があった。
新田次郎の「八甲田山死の彷徨」が原作で、それを読んでいた私は楽しみにしていた。
ところが映画館の座席につくと、背後からぞろぞろという一団が入って来た。
陸上自衛隊の制服を着ていて、指導教官がなにやら指示をしていた。教育隊だったのだろうと思う。
映画が始まった。
彼らは物音ひとつたてずに非常にお利口さんにしていたが、冬山での遭難場面になると誰ともなくすすり泣く声が聞こえて来て、やがて北王子欣也のひつぎを前に高倉健が慟哭する場面になると一斉に全員が大声を上げて泣き出した。
自分らも雪中行軍の訓練を経験したのだろうが、あれにはまいったね。



何の作品かは忘れたが、博多で時間潰しに入った映画館で館内放送があった。
「半ズボンに黄色いシャツを着たお子さんが泣いてアリます」
完全な博多弁だった。



最後に、映画館ではないのだが、長距離バスに乗った際に映されていたのは黒沢作品の『まーだだよ』。所ジョージとかが出ていて結構面白い作品だった。
しかし、クライマックスの場面になって私が下車する地点に着いた。
そのままで、話の終わりを知らないまま現在に至っている。



お後がよろしいようで。





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こんばんは

old comberさん、実は巻き込まれるタイプの御仁なのですね。

人柄がよろしいのかと。

お顔存じませぬが、表情を想像して爆笑いたしました。

元気が出てまいりました。

Re: こんばんは

長く人間やってると、いろんなことが起きるのよ

お宅の爺ちゃんには負けるけどね
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