日曜の朝の来客

隣の母子がやって来た。
身なりを整えて、かしこまっている。

驚いたのは息子の髪だ。黒く染め戻した上で短く刈り上げているではないか。
ピアスも外しているが穴の跡がはっきり残っている。
今日は破れがない真新しいジーンズを履いている。

女房どのがいたので、「まぁお茶でもどうぞ」と言って招き入れた。
(何かあったな・・・)という雰囲気をプンプン漂わせている。

「今日はお礼に参りました」と母親Aさん。
「何かあった?」とお茶を出しながら女房どの。
「はい、この子がご主人に将来のことを相談させてもらっていたんだそうです。建築の勉強をしたいけどどうすれば良いのかって」
金髪(だった)少年が上目使いに私を見る。
「それで学校に入るのが近道だと教えて下さって、この子中学時代の先生の所へ行ったそうです。どういった手続き方法があるのかと」
「それで、どうだった」
私が聞くと彼は自分から話し出した。

「今から高校受験を準備しても、試験を受けるのは来年になってしまうから一緒に中学を出た同窓生は大学を受験する年になる。ブランクが大きすぎるのでいっそ『高卒認定』を受けた方が現実的じゃないか、って」
母親が話を引き取った。
「翌日私もその先生にお電話して詳しく話を聞いたんです。落とすための試験ではなくて、合格してもらうための制度なんだそうです。試験問題は中学の3年間と高校の1年生程度の学力があれば良いそうで、過去の出題問題集と高校1年の時の教科書さえあれば半年程度で受験できるんだそうです。高認対策用の学習書がたくさん出版されているし通信教育の予備校もあるんだとか。高校受験を準備するくらいならそっちが現実的だと教えてもらったんだそうです」
「それで? そっちを頑張ってみることに決めたか?」と私が聞くと
「この頭を見ればわかるじゃん」と言いやがる。
(ほれみろ、私の目に狂いはなかった。髪を黒くしただけでぐっとイケメンが増している)

「高卒認定試験に通れば、建築士や設計士などの専門学校へ推薦状を書いてあげると先生が・・・」
お母さんも嬉しそうな顔になる。
「一気に春が来たわね」と女房どの。
「お昼、食べてかない?」
と誘うが
「いえ、これから主人の墓参りに・・・」と言って腰を上げる。
「天気は戻ったけどまだ風が冷たいので、お気をつけて」
夫婦で見送った。

「子育ても、良いものね」
女房どのがポツリと口にする。
「一歩、また一歩さ」

「実はね」と女房どのがうちあける。
「こないだうちに来てチャンポン食べてった母娘がいたじゃない。あの母親から聞いてたのよ。いつまでも遊んでると将来後悔するよって娘さんがハッパかけたんだそうなの」
「そういうことだったのか、ガールフレンドのアドバイスがまず先にあったんだな。ということは最大の功労者はその娘か?」
我々は笑い合った。

見ると例のネコが今日もうちのクルマのタイヤにおしっこをかけていた。





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あ、

すごい。

『映像』が見えました。

息子を見守る母親、少し生き方が不器用な息子、大人びた女子高生、やり取りを察知する女子高生の母親、きちんと整理されている家の女房どの、恐らく(笑)素敵な御主人。
そして、悠々と歩くねこまでも。

春ですね。
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