パソナの「頭隠して尻隠さず」

意図的になのか賞味期限切れなのか、その後一切の報道が消え去ったASKA薬物事件を掘り起こしてみようと思う。

事件が発生したのは2014年5月、覚せい剤取締法違反(使用)と麻薬取締法違反(同)の疑いで逮捕された「CHAGE and ASKA」のASKAこと本名:宮崎重明56歳と、覚せい剤取締法違反(使用)の疑いで逮捕された知人会社員の栩内香澄美(とちないかすみ)容疑者。
2名を結び付けたとされるのが、大手人材派遣会社であるパソナグループが「VIP接待の館」として構えていた迎賓館「仁風林」(東京港区)で同社の南部靖之代表が主催したパーティだったとされている。

このパソナと深い関係があった政治家の名前が次々と明らかになり波紋を呼んだ。
2014年6月時点での役職名だが、田村憲久厚労相、小野寺五典防衛相ら安倍政権の現職閣僚5人に加え、宮崎容疑者が逮捕されるまでこの迎賓館に通っていたとされるのが鴨下一郎元環境大臣と山際大志前内閣政府政務官、さらに中川秀直元官房長官。
政治家では他に、民主党の前原誠司元代表、自民党の森喜朗元総理らの名前もあがった。

彼らはパソナから「接待漬け」にされたと言われており、また一部では高市早苗政調会長の奈良県生駒市にある事務所にパソナからのスタッフ派遣が継続されているなどといった不透明な金銭関係も指摘されるなど、政治家とパソナとの根深い関係が浮き彫りにされることで安倍政権の根底を揺るがす事件に発展しそうだと当時はささやかれていた。

森元総理の名前が上がった。

この事件の5年前の2009年8月、六本木ヒルズのマンションの一室で、芸能人押尾学と一緒に合成麻薬であるMDMAを服用したとして女性一名が全裸で死亡していた事件があった。
この部屋は、大手衣料品メーカーのワコールの傘下にある女性下着の通信販売会社であるピーチ・ジョン株式会社(非上場、主要株主はワコール・ホールディングス)の代表取締役社長の野口美佳の名義になっていた。
押尾学は麻薬取締法違反(使用)で逮捕されるとともに保護責任者遺棄致死罪で起訴されている。

しかし、この直後に酒井法子の薬物事件騒動が持ち上がり、芸能界も報道メディアも大混乱になった。
酒井法子が逃走劇をしでかしたことから、ワイドショーなどはこれにかかりきりになって押尾の事件からいったん目をそらす結果にもなっている。
しかしこれを「脚本のある出来過ぎたドラマのようだ」と疑いを持ったジャーナリストがいた。
そして森元総理の息子の名前が上がって来ることになる。押尾学は森ジュニアの身代りになったのではないかと。
森ジュニアは薬物中毒者ではなかったかという疑いが持たれていた。

森ジュニアはこの押尾学事件から1年後の2010年8月に飲酒運転で物損事故を起こしている。
当時石川県議の職にあった当人は、小松市にあるコンビニエンスストア「ポプラ小松大島店」に自動車で突っ込み逮捕され、県議会議員を辞職した。
しかし逮捕時に石川県警が、現行犯逮捕ではなく通常逮捕した理由を議会で追及され、「捜査中だ」などとして逃げ回った経緯がある。
つまり飲酒ではなく薬物違反だった場合、交通違反だけでは済まない大問題に発展するのは必至であって、その後に起こる危険ドラッグなどによる暴走事故などが社会問題になったのを考えると、当時もそうだったのではないかという疑惑が残るのだ。
しかし本件は石川県警の手の中にある事案であり、容疑者は現職の県議でありしかもその父親は元総理という身分だ。
地方警察の木端役人が首をすくめたとしても何の不思議もない。
物損事故が起きたのは午前10時という時間帯であり酩酊状態だったという点が不自然だ。
事故当時、ジュニアは足元がよろめきろれつが回らない状態だったと周囲の目撃者は証言している。
推測では議員辞職と引き換えに薬物検査を回避したとされ、麻薬取締法違反よりはまだ飲酒運転の方が体裁が良かったのだろう。

森ジュニアは同年10月に能美市の自宅で倒れ、一時心肺停止になったものの手当てを受けて延命はしたが、翌年2011年7月に急性膵炎による多臓器不全を理由として死去した。46歳であった。
そしてその3年後にASKAの事件が発生する。

一説によると、このような話がある。
六本木ヒルズのマンションに田中香織と一緒にいたのは押尾ではなくこのジュニアではなかったかというものである。
合成麻薬を使用して全裸の女性が危篤状態になり、慌てたジュニアは押尾を電話で呼び出し見返りを用意するから身代りになってくれと要求した。
と言うのも、森親子と死亡した田中香織さんとは接触があったことが確認されており記念写真も残されている。
まったくの作り話だとは思えない。

そして部屋を提供したピーチ・ジョンの野口美佳がなぜ押尾に貸したのかという点も不明なのだが、本当の相手が森ジュニアだったとすればいろんな意味で謎が解けてゆくことになる。
森ジュニアが六本木にある高級クラブ「セリーネ」を中心として遊び回っていたという証言は少なくない。
この界隈で野口美佳と森ジュニアとの接点がある。どちらかと言えば野口の方から接近したようだ。
野口と押尾との関係性よりはずっと真実味がありそうな話になって来る。
ちなみに六本木界隈の水商売の女性たちからは、野口は「下着屋のババア」と呼ばれていたらしい。

ここにもう一人の登場人物が現れる。
日本がバブル景気に浮かれていた頃、当時の自民党副総裁だった金丸信や幹事長だった小沢一郎と近かったと言われている政財界のフィクサーの異名を持つのが熊取谷稔(いすたにみのる)氏だ。
1988年に発覚したリクルート事件で有罪判決を受けたNTTの元会長、真藤恒氏の側近でもあった人物で、パチンコ機製造販売のコスモ・イーシーを中核とする企業グループのオーナーだ。
パチンコにプリペイドカードを導入するために監督官庁である警察庁に働きかけたことで有名になった。
この人物が、なぜか押尾学の保釈金を用立てている。

その後、ゴルフ場やパチンコ関連会社など約30社を実質経営していた熊取谷氏だったが、そのグループ企業のうちの数社が東京国税局の査察を受け数百億円の所得隠しを指摘された。
法人税の追徴課税額は重加算税を含めて約90億円。
不動産管理会社であるインターナショナル・イーシー社は2014年12月に東京地裁へ自己破産を申請。負債総額は債権者17人で485億円。追徴課税は納税されないままとなった。

一方の押尾学は麻薬取締法違反と保護責任者遺棄致死罪で有罪判決を受け、3年6月の実刑にて満期は2015年9月の予定だった。
しかし収監先の静岡刑務所から仮釈放となって出所したのが2014年12月のことだった。9カ月近く刑期が短くなっている。
その押尾は「大物支援者のおかげで早く出所できた」とうそぶいているとか。
いったいこの事件には、どこまで「大物」が関係しているのだろう。

パソナに話を戻そう。
東京都千代田区大手町に本社を置く、東証1部上場の人材派遣会社である。
パソナはパソナグループの完全子会社で、パソナグループの代表は代表取締役の南部靖之氏。そして取締役会長が竹中平蔵氏。
同グループの中にはベネフィット・ワンという会社もあり、そこでは公官庁などの福利厚生業務の運営代行サービスを行っている。
ベネフィット・ワンは総合商社である丸紅の元関連会社だったわけであり、戦後の日本経済と政界に深く食い込んでいたルーツを持っている。
「公官庁の福利厚生業務の運営代行」と聞いてピンと来る人は少ないだろう。
つまりパソナグループがどれだけ政治につながっているかを示していることになる。

現在国会で議論されているのが労働者派遣法改正案についてだ。
この改正案は俗に「呪われた法案」と言われている。
なぜ「呪われた」という表現になるのかというと、前回の通常国会において条文や配布資料などにずさんなミスが相次いだことから「改正法案」の提出まで至らなかったという事情がある。
「2度廃案になった法案は呪われているので成立しない」といった通説が国会にはあって、ここから派遣法が呪われているとされる理由だ。
ただし、政府は派遣労働を巡って、専門性が高いとされる一部の業務を除いて、現在は最長で3年までとなっている派遣期間の制限を撤廃する一方、1人の派遣労働者が企業の同じ部署で働ける期間を3年に制限するなどとした労働者派遣法の改正案を閣議で決め、国会に提出した。
法案の付則には、法律の施行後、派遣労働者が大幅に増えた場合などは速やかに法律の見直しを検討することが盛り込まれている。

つまりなぜ「呪われた」とされるのかと言うと、改正案を急いだからこそずさんなミスが発生したものであって、ではなぜ急ぐ必要があったのかという問題が出て来る。
そもそもこの派遣法改正は竹中平蔵の主張から始まったものであって、「現在の正社員は過保護になっている」だとか「人手不足になれば海外の労働力を持って来れば良い」とかの発言で日本人の労働環境を力ずくで変えてしまおうといった狙いが感じられる。
それはパソナの会長だからであって、この改正法案が通れば莫大な利益とビジネスチャンスが手に入ることになる。
高卒や大卒の若者が就職先に悩み苦しみ、非正規雇用もやむなしと思わざるを得なくなっても、痛くも痒くも感じない爬虫類のような男の企みによって一生を棒に振る国民が増えて行く。

そのために「迎賓館」を設けてあらゆる政治家を「接待漬け」にした。
巨大な疑獄事件に発展さすべき出来事だったはずだ。
それがメディアを操って、単なる男女の醜聞に貶めてしまった。栩内香澄美の名前など憶えている人は多くない。
まさにこの国のメディアは害毒以外のなにものでもない。
そして、この「迎賓館」を通して出会ったASKAと栩内香澄美が麻薬取締法違反で逮捕された。

世間はこんな賞味期限切れのニュースは忘れ去っているかも知れない。
しかし、この国に根深く巣食った癌細胞は確実に宿主の生命を脅かし続けている。

こういった「問題に砂をかけて隠してしまう」ことをネコババと呼ぶ。
追徴課税を免れたパチンコ機器メーカーの熊取谷の「ネコババ」でもあるだろう。
2014年の12月といえば90億円に達する追徴課税を潜り抜けた時期に合致している。



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