文化の味わい

ひな祭りの季節がやって来た。

お内裏(だいり)様とお雛(ひな)様。
この配置が難しい。

向かって左がお内裏様。すなわち男性だ。
その反対がお雛様。女性である。

ひな祭り


ふたり本人たちの身になってみると、男性の左側に女性が配置される。
これは結婚披露宴の際にも同じ配列になっている。何故か。

司馬遼太郎の『龍馬が行く』を読むとその謎が解けて来る。

左腰に刀を下げた武士は、素性の知れない同行者を自分の左側に置きたがらない。
左腰に差した刀を抜くと、真っ先に斬れるのは自分の右側の相手だ。
つまり相手より右側に居た場合は非常に不利な位置だということになる。
だから龍馬は、人斬り以蔵とあだ名された岡田以蔵と歩く際に、以蔵が自分の左側に立ちたがる様子を、とても不愉快に思っていたというシーンが描かれている。

だから日本の時代劇を注意深く観ていると、侍は普段左手に刀を持っているが、殿様などの上司に面会する際は右手に持ち替えている。
すなわち右手に持つということは、刀を抜く意志が無いということを示している。

だから、心を許した者だけが自分の左側に立つことを許す行為なのであって、仮にその者から撃たれようとも本意であるという意思表示になっている。

だからお内裏様は自分の左側にお雛様を置くことによって、親愛の情を示しているのである。
男尊女卑とかといった問題ではなく、「レディ・ファスト」の精神が古い日本のしきたりにあったことを示している。

それとは意味が少々違うが、ビールなどの飲み物を相手に注ぐ際に、良くラベルをひっくり返して逆手で注ぐといったマナーが見受けられることがある。
この意味は何なのか。

上記と同じ意味で、存在を認められた側の者は左に座っていたとして、右手に持ったビール瓶なり徳利なりを右側の人物に注ごうとすればどうなるか、イメージしてほしい。
逆手に持って、ひっくり返したようにして注がざるを得なくなる。
だから、接待する時は必ず相手の左側に座らなければならないのは日本の常識であり、社会人が先輩から学ぶ「いろはのい」だと言うことができる。

これがひな祭りの位置関係の重要なポイントであって、こうした基本的な日本文化のしきたりが継承されてこそ意味があることになって来る。
ただ単に「人形を飾ればそれで良い」といった世界ではない。

我々が育った日本という文化は、実に奥が深いということがわかって来る。



皆さん、ご機嫌よう。





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逆だ~。

こんにちは。

うちは昔からお内裏様が向かって右、お雛様は左に飾ってます。

宮中では左が上座なので、お内裏様は左側。京都風はそうだって、母に習ったけど、違うのかな?

お雛様は侍じゃなくってお公家さんだからかな。

Re: 逆だ~。

舞台では向かって右が上手(かみて)と言って、左が下手(しもて)。
だから落語で「大家さ~ん」「何だい与太郎」なんて言う場合、「大家さ~ん」で上手を向いて「何だい与太郎」で下手を向く。
向かって右が上座なのは宮中だけのことじゃない。
だから雛人形の場合は、お雛様を上座に置いているんですね。
京都が逆だなんて初めて知りました。

天照大御神と言い、卑弥呼と言い、どうやら日本(倭国)はいにしえのころから女系文化だったのではないかと、これは私的な意見です。

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