劣化する日本社会

ひとつ笑い話をご紹介しましょう。

先の衆議院選挙において、ある選挙区の応援演説に立った民主党の岡田さん。
マイクを持つなり第一声が「皆さん、このシャッター街を見てください。これは誰のせいだと思いますか?」
すると聴衆から間髪を入れず、「イオンのせいだ!」
周囲から爆笑がわき上がったという話。

わたし、過去のブログでも書いたんですが、社会人になった折に就職祝いとしてもらったモンブランのボールペン。
これの書き味が気に入って、インクカートリッジを取り換えながら何十年も愛用し続けたんです。
そんなに大量に流通しているペンではないので、カートリッジを取り換えるにはそれなりの専門店に出向く必要があったわけ。
都内の中心部であればそのような専門店はいくらでもあるんですが、郊外に住むようになると身辺に見つからなくなってしまった。
それでも駅前商店街などの文房具屋さんは、わたし以外にほとんど需要がないようなモンブランのインクカートリッジを在庫していてくれました。
でもその店のご主人が亡くなってから、廃業されてしまった。

店の名前こそ言いませんが、近くにあるのは大型スーパーだけ。
そこには様々なテナントが集まっていて、当然のように文具コーナーもあるんですが、そこの店員さんはモンブランのインクカートリッジを知らない。
「取り寄せは可能ですか?」と聞いても、店長からこう言われた。「あまり出るタイプじゃないですからねぇ・・・」

ドイツのモンブランは何十年もカートリッジの形状を変えずに作り続けていても、日本の小売店が売ろうとしていない。
営業成績の表彰を受けた副賞に電気髭剃りをもらったことがありました。
ブラウンの充電式のタイプだったのですが、何年かするうちに充電が利かなくなって街の電気屋さんに持ち込んだ。「バッテリーだけ交換してもらうこと、できますか?」
するとその時も店員さんがこう言った。「特殊なバッテリーですからね。新しいシェーバーに買い替える方がお安くつきますよ」
誰でも一度は聞いたことがあるような美術館の収蔵庫を受注した際の表彰で、わたしにとったら記念品。安くて高品質のシェーバーがありますよ、と言われて「はい、そうですね」とは言えない。
家族のように育てて来た犬が病気になって、ペットショップに相談したら「新しいのに買い替えればいかがですか?」と言われたようなもの。当然わたしは憤慨したわけです。

行き付けの焼き鳥屋で顔なじみのお客さんがいるんですが、彼は元大工さんのリタイヤ組。
自分で小さな工務店を営ってたらしいんですが、○○ハウスなどの建設大手の手形被害を受けて看板を下ろしたと言っていました。
その彼は「昔は大工が家を建てたならば、7.5.3でご挨拶をしたもんだ」と言うんですね。
つまり一軒の家を建てれば、その後3年目、5年目、7年目には「悪いところはありませんか?」と言ってアフター・ケアをするのが常識だったと言うんです。
「ところが最近では、建設メーカーばかりか、家電メーカーまでが建て売り住宅を造って売りっぱなしの状態を見せている。」と憤慨しているんですね。
わたしも収蔵庫などで木工関係の職人さんらと一緒に仕事をする機会が多かったので、その棟梁とも話が良く合ったわけ。

「大体ね、最近の建て売り住宅なんてほとんどが工場で規格製造された乾式工法だよ」乾式工法と言うのは、鉄骨を組んで外壁を貼り、断熱材を挟んで内壁を貼れば一丁あがりというもの。
「俺たちが師匠から習った建て方は、北側に使う柱と南側に使う柱を選び分けろ、というもんだった。今じゃ北も南も関係なく工場で規格通りの鉄骨(ダブチャン)を造るんだから俺たちのような知識は必要じゃなくなっている。しかしね、数年前に行ったヨーロッパには古い建物がちゃんと残っていて、パリのアパートなんか築100年なんてざらにあるらしい。日本の個人住宅で築100年なんてあるかい?」
インスタントですねとわたしが言うと「おめぇ、上手いこと言うなぁ」と誉められた。
「今の世の中は何でもかんでもインスタントよ、子供の教育にしてもなぁ。親が信仰の背中を子供に見せずに文化生活だけに夢中になった結果、今どきの子供は『宗教なんて信じるのはバカだ』と言うようになっている。日本人は便利なものだけを選んで、国としての良さを捨て去ってしまった。故郷には立派な実家があるのに、子供夫婦は都会でインスタント住宅に満足している。」
「でも東北の大震災では、日本人の美徳が世界中から絶賛されたじゃありませんか」とわたし。
「ありゃ田舎だからだよ。神戸を見てみろ、復興後の神戸がどんなことになっているか、おめぇ知ってるか?」
「たしかに・・・」

2015年が始まった。
日本人は、深い部分で大きな岐路に立たされているような気がしてならない。
政治とか経済とかの表面的なことではなく、本質的な部分でずいぶん日本人は性能劣化を起こしているように思える。
立ち止まって沈思黙考することもたまには必要なのかも知れない。
今日は成人の日だ。


皆さん、ご機嫌よう。





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