どっちがどっち

あるとき女子社員から質問された。「ショベルとスコップって何がどう違うんですか?」

机を並べていた同僚も「ん~」と唸って黙り込んだ。

「ショベルっちゃぁ工事用の大きなヤツで、スコップっちゃぁ園芸用ではなかったかな」と私はあやふやな返事をしてしまった。

わかったような、わからないような不満げな顔で彼女は部屋を出て行った。

その後ろ姿が見えなくなって始めて同僚が口を開いた。

「コマツのショベルカーとかあるくらいだから、先端がまっすぐになってるのがショベルで、先がとがっているのがスコップじゃないかな」

するとそれを聞いていた上司がこう言った。

「バカお前。作業員は尖っているのを『剣スコ』、まっすぐなのを『角スコ』と呼んで区別してるんだよ。だからどっちもスコップさ」

「ってことは、ショベルは片手で使う小さなヤツですか?」同僚も納得がゆかない顔になった。

ありゃりゃ、私もどっちがどっちだか分からなくなった。

今のようにインターネット検索とかできる時代じゃなかったから、昼休みに近所の図書館に行って小学館の大百科事典を開いた。

「ショベルは英語の「shovel」から来ていて、スコップはオランダ語の「schop」から来ているという語源の違いだけで、形状による区別はない」と書かれてあったように記憶している。

しかしその回答では女子社員は納得しないだろうと思って、伝えることはしなかった。「トビウオ」か「アゴ」かの違いと同じなのかも知れない。

ちなみにJIS規格では肩がまっすぐで足をかけられるのがショベルで、なで肩で足をかけられないのがスコップだと定義しているらしいが、そのことを知っている現場作業員に出会ったことは一度もない。



農作業で使うクワを漢字で書くと「鍬」となるが、スキを漢字で書くと「鋤」となる。見た目だけでどっちがどっちだか、おそらく最近の農家の後継者でもわからないかも知れない。

『針で掘って鍬で埋める(こつこつ努力したものを、いっぺんに駄目にする)』という言葉がある。政府閣僚の失言を思い出す。





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