メタンハイドレート、ハイコストの実証試験

産経ニュース、2017年5月4日の記事から。

『経済産業省は4日、愛知県沖の東部南海トラフで行っていた「燃える氷」と呼ばれる次世代燃料メタンハイドレートの産出試験で、天然ガスの採掘に成功したと発表した。洋上でガス産出に成功するのは、平成25年の産出試験に続き2回目。30年代後半の商業化に向け、3~4週間にわたる連続産出を目指す。』

この記事を読んで喜ばしく感じた人はどれほどいただろう。

主体は経済産業省であって「ちきゅう」と名付けられた深部探査船で、水深1千メートルの海底をさらに約300メートルほど掘り進める産出試験だった。

経済産業省というのは既存の産業界の団体の利権を守る政府組織であって、革新的な技術開発、すなわち「まだどこの企業も着手していない利権の空白地」を開拓する使命は帯びていない組織だ。

だから経産省が「ちきゅう」を使ってやって来たことと言えば、革新的な発想や技術をねこそぎ否定することだった。「ちきゅう」を使って調べましたが、採掘コストにペイしません、という理由づけにして、石油利権や電力利権を擁護することに必死になってきた。なぜだかわかるだろうか。経産省の官僚たちの退職後の天下り先を確保するためだ。

メタンハイドレートには2種類あって「砂層型」と「表層型」だ。「砂層型」と言うのは海の底の砂を掘り進んで行って初めて得られる物であって、ハイドレートは当然砂と混ざり合っている。採掘にも分離にも相当なコストがかかる物であって、原油や液化天然ガスをタンカーで輸入する思いをすればとんでもない高額な資源になってしまう。経産省はそれが言いたかったのであり、そのために国民の税金で運営される「ちきゅう」を使って「ダメですよ」と示したわけだ。

産業界の利権の代弁者である経産省は、どうあってもメタンハイドレートを否定しなければならない事情があった。

ところが「表層型であれば魚群探知機などの格安な設備で発見することができて、深度もそれほど深くない場所で安いコストでの採掘が可能です」と主張する人物が選挙で当選して国会議員になった。

官僚がどれほど偉くても国会議員にはかなわない。議員は次々と経産官僚を呼びつけて資料の開示を要求し、党の部会でもメタン開発の意義を説いた。

本当は不本意な試掘に乗り出さなければ行かなくなった経産省は「ちきゅう」を「砂層型」が埋まっている愛知県沖の東部南海トラフでハイコストだとわかっているメタンを採掘し「3~4週間にわたる連続産出」が可能かどうかを見ると言う。

連続産出はできるかも知れない。しかし彼ら経産省の狙いは幾重にも防護柵が準備されていて、「確かに連続産出はできましたが、これだけの莫大なコストがかかりました」という台本が用意されている。それも経産省が守ろうとする業界団体の寄付金ではなく、すべては国民の税金を遣って。

「メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム」という組織がある。略称はMH21だ。官民学共同体として平成13年度に発足したこのプロジェクトは東部南海トラフ(静岡~和歌山県沖)をモデル海域として掘削調査を実施したが、莫大なコストがかかるとして平成20年度にプロジェクトの「フェーズ1」を終了した。

なぜ最初から東部南海トラフをモデル海域としたのかの理由は明らかにされていない。「ちきゅう」が深部海底調査を得意とするからなのだろうか。この海域でメタンが採集されることはわかっていた。そして採掘には莫大なコストがかかることも。それを経産省があえてやって見せたのは「ほら御覧なさい。やっぱり無謀な計画だったんですよ」と示したかったからだ。

しかしメタンハイドレートのエキスパートのような人物が現れて、発言力の強さに物を言わせて官邸とのつながりも指摘されるようになると、資源エネルギー庁を抱える経産省は知らん顔を続けることができなくなって来た。

そこでMH21はフェーズ2を立ち上げて、フェーズ1で得られた結果をもとに、「商業化の非有望性」を実証して見せなければならなくなった。

表向きは「官民共同でより商業化に近い規模の産出試験を実施する」としているが、フェーズ3まで計画されたこれら産出試験で「やっぱり無理です」との結論に至りたいわけだ。なぜならばMH21のホームページで本音が語られている。

「フェーズ2では、海洋産出試験の実施等、フェーズ1に比べて規模が大きく、実証的な課題が多くなることから、引き続き産学官で連携した実施体制を構築するとともに、石油・天然ガス資源開発会社との連携をより深めることを目指す。また、広く一般への広報活動等に取り組み、国民の理解を得つつ実施していくこととする。」

つまり「国民の理解」とは、「あきらめて下さい」ということだ。そうしなければ日本は外国から石油を買い続けることができなくなり、中東やアメリカ(シェール)やロシア(天然ガス)への国民の資産流出を維持できなくなるからだ。

さらには原子力発電との兼ね合いもある。輸入原油が価格高騰する場合、火力発電による電力料金の値上げが避けられず「それが嫌なら原発再稼働を認めなさい」と言いたいのが経産省の本音だ。国産メタンなどに邪魔されるわけには行かないのである。

同ホームページにはフェーズ2の目標をこのように示している。「我が国周辺海域のメタンハイドレート層が安全かつ経済的に開発できる可能性の提示。」ここで「可能性」という言葉を使っている。「確立する」とは言っていない。語るに落ちた格好だ。

フェーズ2のプロジェクトリーダーは東京大学人工物工学研究センター教授の増田だが、国民をケムに巻くのであればもう少し日本語を理解した方が良い。

産経ニュースは記事をこのように締めくくっている。

「今後は約1カ月間、連続運転を行い、天然ガスを安定して生産できるかを確認する。試験結果を踏まえて、民間主体の開発への移行を検討するほか、31年度以降の開発工程表を作る計画だ。

 同試験は国の委託を受けた独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)などが実施した。前回の試験では約2週間の連続産出を目指したが、海底の砂などが採掘時に巻き上がって設備に詰まるトラブルが発生し、6日で打ち切っていた。」

独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構という名称が出て来た。まさに日本の基幹産業の集合体ではないか。

頼むから日本海側の新潟沖などでやってくれないかなー。日本の官僚たちの限界はここかなー。





スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR