夢のエンジンが夢ではなくなる

水素自動車を積極的に開発しているのは、ドイツのBMWと日本のマツダだ。他にも数社が試験エンジンを作り、理工系の大学なども実用化を模索しているが、商品化にまでは至っていない。

既存の内燃機関(エンジン)を利用して水素ガスを燃焼させるものであって、トヨタ・ミライやホンダFCXなどのように「燃料電池で発電し、電気モーターを回転させる方式」とは異なっている。

なぜマツダが積極的なのかというと、従来のレシプロエンジンだと一つのシリンダーの中で「吸入」「圧縮」「爆発」「排気」を繰り返すために高温になりやすく、それによる燃料の過早着火(バックファイア)が起きやすいが、マツダが持つロータリーエンジンでは低温の吸気室と高温の燃焼室が分かれることから過早着火を回避することが可能になるためだ。このロータリー技術を持っているのは世界でマツダだけである。

とは言え、水素ガスを液化するためには膨大なエネルギーを要するのであって、電気ポットでお湯を沸かすようなことになりかねない。電気ポットでお湯を沸かすというのは、「石油火力発電」→「水蒸気発生装置」→「発電タービンの回転」→「送電ロス」→「変圧器」→「電気ポット」→「お湯」ということになり、「だったら最初から石油を燃やしてお湯を沸かせば良いじゃねぇか」ということになって来る。つまり壮大な無駄がおこなわれることになる。

ところが水素ガスというのは電気分解しなくても、タダ同然の副産物として得られる方法がある。

日本では経済産業省の支援で電力会社9社を中心とする11法人の共同開発が1986年度から始まったのが「石炭ガス化複合発電(IGCC)」である。石炭は燃やすのではなく、粉状にした石炭に高温の酸素を吹き付けることによって一酸化炭素と水素からなる高温の可燃性ガスを得るという方法だ。

空気中の酸素はマイナス183℃で液化する。LNG(液化天然ガス)を気化する際の冷熱を利用すると液体酸素を製造する電力は大幅に削減することができる。この酸素を上記のIGCCに利用することで今度は水素が得られることになる。

コンバインドサイクル発電とはガスタービンで発電する一方で、その排熱で蒸気を作り蒸気タービンも回すという「ムダをなくす」技術のことだ。

だからその考えの延長として、得られた酸素で水素を作れば良いじゃないか、というのがIGCCであり、その水素と燃料電池を組み合わせたものが「石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)」ということになる。

この実証炉に取り組んでいるのが広島県にある中国電力の大崎発電所で、ここでマツダのロータリー技術と絡んで来ることになる。

その循環エネルギーの元になるLNGだが、中国電力の営業範囲にある日本海側で、青山博士を中心としたメタンハイドレートの採掘技術開発が本格化している。メタンとは天然ガスのことであってロシアや中東からわざわざ買って来る必要がなくなって来る。そして石炭で高効率の発電ができるようになれば石油からの解放が進むことになる。技術開発とはこういうものだ。

アメリカではシェールガス・オイルの開発が盛んだが、地層を水圧で破壊することから大規模な環境破壊が進んでいる。地下水は汚染され、水道水も使い物にならなくなっている。そのシェール層が多いとされているのが中国で、中国共産党はアメリカのシェール採掘技術を盗もうと必死になっている。

シェールオイルのカロリー単価を下回るように中東各国は原油価格を下げていたが、それが化石燃料の切り売りで生きて来たロシアを間接的に苦しめた。ここへ来て日本がメタハイという自前資源を確保すれば、プーチンはしばらく立ち直ることができなくなる。プーチンが日本に求めるものとは、自動車技術などではなく、上記のIGFC技術なのである。

そして、その副産物のような水素をロータリーエンジンで燃やそうとしているのがマツダなのだ。ロータリー技術があればこその開発なので、他社から盗まれる心配はない。

電力とは製造業にとって重要不可欠な「資源」であり、電力供給能力が不安定な国は製造業を発展させることはできない。

中国の人件費が上がったからと言ってベトナムやバングラデシュなどに工場を移転させるメーカーが増えたが、それらの地域ではまだ電力の安定供給が間に合っていない。メキシコにカローラの工場を建てようとしているトヨタはどうだろう。

電力の安定供給は原子力発電だけのものではない。上関原発計画で激しい反対に遭っている中国電力は、大崎発電所でIGCCに取り組んでいる。そしてすぐそばにあるのがマツダなのである。

RX-8に搭載されたハイドロエンジンはプレマシーに引き継がれた。水素ロータリーがル・マン24時間耐久レースに出ることを期待したい。むせび泣くようなロータリーサウンドの後には、水が流れているだけだ。大気汚染で苦しむパリジャンはきっと飛びつくことだろう。




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