本当にあった怖い話 ③

とても真面目で心やさしい部下がいた。

ある日彼が仕事で外出したあとで、警察から「身元引受に来てくれ」と連絡が入った。直属の上司だった私が出向いた。地元の所轄署の交通課だった。

何か事故でも起こしたんだな、と思って駆け付けると、案内された部屋の隅で、うなだれるように座っている。

「後日呼び出しますので、今日のところは帰って結構です」と言われて、必要書類に署名させられた。

二台のクルマでは話ができないので、会社に着く前にと喫茶店に入った。

「何があったんだ」

「こっちの話を聞いてくれないんです」

「だから、説明してみろよ」

「○○町の歩道のない狭い道路を通ってたんです。すると数十メートル前方で、自転車に乗ったおじいちゃんが道のわきにある側溝に前輪を突っ込んで自転車ごと転んじゃったんですよ」

「あらら」

「私はスピードを落として現場まで行って、すぐ後ろに停めて、クルマから降りて」

「助けようとしたんだな」

彼は首をタテに振りながら、涙ぐみはじめた。

「そのおじいちゃん、頭を怪我してて血が出てたんです。私は誰かに救急車を呼んでもらおうと思って、近所の家に声をかけました。すると飛び出して来たおばさんが『○○さん!』とか言って走り寄って来たんです。ああ、知り合いがいて助かったなと思ったらそのおばさん、鬼のような顔になって私をにらむなり『どんな運転してるのさ!』と怒鳴りつけて来るじゃないですか」

「何だそりゃ」

「私が自転車ごとおじいちゃんを跳ね飛ばしたように勘違いしてるんです。近所中から住人が次々と出て来て、救急車を呼ぶやら警察を呼ぶやらそりゃもう大騒ぎになりました」

「誤解ですよとは言わなかったのか」

「言いましたよもちろん、私がぶつけたのじゃないって。そうしたらそのおばさん、おじいちゃんに聞くんですよ、『この人にぶつけられたんでしょ?』と。その時はじめて気が付いたんですけど、そのおじいちゃんボケが来てるらしく、おばさんに向かって『そうそう』と言ったんです」

「あちゃー」

「おじいちゃんのお孫さんとかいう青年が来て私の胸ぐらを掴むんですが、救急車が来たものだから同乗して行きました。その後ろから来たパトカーの警察官が『現場検証を始めます』って、ちょっと待ってくれと押し問答ですよ」

「クルマを調べればすぐに誤解だということがわかるだろうに」

「もちろんクルマに痕跡なんてないんですが、速度を出して近寄ったから驚いた自転車が側溝に突っ込んだのだろう、と推測じみたことを言い出してまったくこっちの話を聞いてくれません。終いには『見え透いた言い訳しやがって』と言って警察署まで連行されたんですよ」

「ひどい話だな」

「警察署の交通課に連れて行かれたんですが『あくまでも否認するのなら刑事課に回すぞ』と脅されて」

「同意したのか?」

彼はこくりとうなずいた。

「人身事故とは言え、接触がなかった以上被害者の過失もあるから示談で済むだろうと言われました。保険があるし」

「民事不介入ってやつだな」

「でも減点は付くんだそうで。警察があんなとこだなんて考えてもみませんでした」

「やれやれ、とんだ災難だったな。今日は帰りに飲みに出るぞ」



そう言えば、選挙違反を捏造した警察署があったような・・・・






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