応接室

秘書課の女性社員がお茶を持って入って来た。

応接室のテーブルは、ソファーの高さに合わせてあるのでとても低い。彼女は床にひざまずいてテーブルに湯飲みをそっと置いた。

「恐れ入ります」彼は女性社員に会釈した。

「最近どうかね、業績の方は」目の前に座ったスーツ姿の中年男が話しかけて来た。

「いや、媒体が多様化して来ているので前年度割れですよ」

「とはいえ、お宅はシェア一位だから安泰だし・・・」男は笑っている。

彼は湯飲みのふたを取った。「ところで部長さんのとこの担当役員の常務さん、娘さんは来春に大学をご卒業なさるのではなかったですか?」

「お、良く覚えていたね」

「ええ、入学祝いを贈った覚えがありますから」

「君はマメだね、感心するよ」

「どちらか、就職は決まってらっしゃるんですか?」

「それがねぇ」男は音をたててお茶を飲んだ。「失業率は減ってるらしいが、ほとんどが非正規だそうで、まだ内定に至っていないらしいと聞いた」

「うちで良ければ人事部に空きがないか聞いてみますが」

男の目がきらりと光った。

「そりゃお宅だったら一流企業だし株価も安定してる。断る理由がないだろう」

「理系向きの部署も、文系向きの部署もありますからね」

「人事部に聞いてみてくれないか」

「そうですね、部長の顔も立つというものだし」

「あ、こないだのCMの話ね、あれ進めてくれて結構だから」

「わかりました、女優はアレを使いましょう。彼女の所属事務所の社長の息子もわが社にいるんですよ」

「ほうそうかね、隅におけんな、あはは」



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