文明の退化

かつて住んでいた町の町内会で、子供会がキャンプに行くという行事があった。我が家には子供がいないので他人ごとのように思っていたら、マンションのお隣さんが「夫が仕事で休みが取れないんですが、手伝ってもらえないでしょうか。子供が楽しみにしているもので」と相談を受けた。このお宅の坊やとは普段から仲良くしていたし、当日は仕事が休みだったので「私で良ければ」と引き受けた。

F-1グランプリの録画を女房どのに頼んで私は参加した。当時はアイルトン・セナがマクラーレン・ホンダで大活躍していた。

ところが、キャンプ場に着いてみると、ほとんどの父親がアウトドアのことを知らない。テントの張り方は元より、薪に火を点ける方法も知らない。あるお父さんは、直径10㎝ほどの薪にそのままジッポライターで火を点けようとしていた。その息子は知らん顔でゲームボーイをしている。

「ペグはこう打つんだよ」と教えて回ったあとで、「火をおこすことできますか?」と町内会の役員から相談された。

昔は各家庭のガスコンロは自動着火になっておらず必ず徳用マッチがあった。マッチを擦ることは生活の「イロハのイ」だったが、いつしか子供はマッチを擦ることができずにマッチ棒を折るようになっていた。

鉛筆を肥後守のナイフで砥いでいたのは私の世代の少し前までで、ハンドル式の鉛筆削りが流行して、やがてシャープペンが登場した。だから現代の子供ばかりか大人までが鉛筆を削れなくても当然と言えば当然だ。

社会が変化するので知らない物があっても無理はないのだが、それは社会から消え去ったものだけに許されることだ。今さらテレックスの使い方を社員に教える会社はないだろう。

しかし現代でも必要な基本知識はあって、作業用の白熱電球を木くずだらけの場所に置いたという無知な大学生が火災事故を起こして子供を死亡させるという事故が発生した。

LED照明が一般的になっているとは言え、子供向けの木製遊具に木くずをまいて白熱電球を置くなど、無知による危険性だ。

さらにこの事故を報道するテレビ番組は「白熱電球」というだけで、一般家庭用の電球を持ち出したが、作業用の投光器という意味がわかっていない。500W前後の工事用の強力な白熱灯だ。

投光器


コレはなかなか一般人が接する機会はないが、それを大学生が無知なままに使用するという危険がありありと読めて来た。

工業大学にしてコレだ。いかに現代の日本人が基礎を失っているかという何よりの出来事だった。

キャンプ場で薪に火が点けられないからといってあまり実害はないが、花火大会の屋台が発電機を爆発させるといった事故も起きた。悪意はないのだろうが無知の成せる技だ。セルフ・スタンドで咥えタバコをしたり、ガス漏れ警報器が鳴ったキッチンの換気扇を回すようなバカな大学生がこれからも出るのだろう。

「無知を知る」ということは、実に大切なことなのだ。





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