セルロースナノファイバー

日本海側を中心として、メタンハイドレートの埋蔵量が膨大なものである可能性が出て来た。
メタンガスが低温高圧で固体化し、シャーベットの状態で海底に積み重なっているという。
政府の環境省などが調査した太平洋側は、海底の土砂に紛れてしかも海底より300mほど掘り進まなければ回収ができず、商業化することは不可能だろうという結論を出した。
つまり既存のエネルギー利権をいじりたくないという、結論ありきの調査だったわけだ。
しかし海底の表面に結晶体で露出している「表層型」だと、回収にさほど技術や設備が必要ではない。日本海側はこのタイプなのだ。
分布調査は魚群探知機で十分。
しかもメタンハイドレートは可燃物なので、今ある火力発電所で利用することが可能だ。

メタンガスはそのまま大気中に放出されれば二酸化炭素の20倍の温暖化ガスになり、牛のゲップに例えられている。
世界中の海底から莫大なメタンガスの泡が吹き出されている。
しかしメタンハイドレートの状態で燃焼(酸化)させると、出て来るのは二酸化炭素だから、20倍ものモンスターになる前に二酸化炭素に置き換えてやることができる。
しかも日本の領海は世界的に広大で、日本国内で消費するだけではなくエネルギーの輸出国になる可能性が高い。

このことから欧米のオイルメジャーが危機感を持っていて、日本政府に対して研究開発の妨害圧力をかけて来ている。
それだけではなく韓国が占有権を主張している竹島付近の海底で、メタンハイドレートの調査をやろうとしているが、その調査費は米国の民間企業が投資している。
ただし実際に調査するのは韓国であって、技術的には調査能力が欠落しているとされ、計画のまま中断しているとか。
あの海域で韓国は長年、廃棄物の海洋投棄を続けていたために、海底が廃棄物で埋め尽くされているという。

さて、このメタンハイドレートを考えた時、燃料としての部分は石油の代わりになろうことはすぐに理解できたのだが、石油は燃料だけに使われているわけではない。
プラスチックや化学繊維、アスファルト、塗料など様々な分野で利用されていて、「メタンが取れるからもう石油は必要ない」とは言えないのだ。

ところがである、植物由来の素材から鋼鉄の5倍の強度を持ち、重さは鉄の5分の1という夢のようなものを京都大学生存圏研究所の矢野浩之教授が開発に成功した。
その名も「セルロースナノファイバー」。
謳い文句は「強度は鋼鉄の5倍、熱に強く、プラスチックよりも軽くて、ガラスのように透明」という。
熱膨張率はガラスの50分の1で石英ガラスなみ。
原材料は植物中に含まれるセルロースをナノレベルまで微細に粉砕して得ている。
つまり、国土の7割を森林が占めている日本は、先進国でもトップクラスの森林資源を持っており、それはいくらでも再生することができるし、その管理技術を持っている。
しかもセルロースは間伐材などからばかりではなく、稲わらや枝豆のから、トウモロコシの芯、そうした物からも回収することができる。
つまり原材料費は限りなく安価だというわけで、それに焼酎やジュースの搾りかす、あるいは豆腐の搾りかすなどを利用すれば、処理費の節約にもなるという実にありがたい素材なのだ。

この「セルロースナノファイバー」はダイセルファインケム株式会社がセリッシュという商品名で出している。
この企業、本社を東京日本橋に置いていて資本金は7000万円、社員数は90名という中堅の会社でしかない。
矢野教授は、一浪した上で京都大学に入ったものの専攻は第七志望の林産工学部だった。
最初の頃は木材などに興味はなく、勉強に身が入らなかったそうだが、3年生になり授業に専門性が出て来るようになると興味が出て来た。
大学院の修士課程に進んだのち、さらに博士課程へと進む中で木材の強度を上げる研究に没頭する。
着目したのはセルロース。
これをナノスケールまで解きほぐした「セリッシュ」という製品がダイセルファインケム社から出ていたが、まだ素材として販売されているだけで、何に使われるかは明確になっていなかった。

セリッシュに樹脂を混ぜて、乾燥させたのち圧縮形成する。始めのうちは、100MPaほどしか出なかったが、セリッシュをシート化したうえで乾燥させ、樹脂を染み込ませ、これを重ねて熱圧する方法を試みた。すると、強度が高まっていった。
そして2001年夏、ついに鋼鉄の強度400MPaを超える材料を開発するに至ったのである。
植物原料で世界一の強度の材料を開発したのは矢野教授の研究が世界初となった。

2014年に安倍政権が打ち出した「日本再興戦略(第三の矢)」の具体的施策の一つにセルロースナノファイバーの研究が盛り込まれた。
経済産業省も高い関心を示して来たが、矢野教授は林野大国である日本の地方再生を目指したい考えだと言う。
セルロースナノファイバーは炭素繊維(カーボンファイバー)の6分の1程度のコストで、自動車のボデイから部品まで、あるいは家電製品や建材、窓ガラスなどに幅広く活用される期待が持たれている。

願わくば、メタンハイドレートのように、既得権益の亡者たちから横やりを入れられないように望みたいものだ。
あるいは戦闘機やミサイルの軽量化にも利用できると考える者が現れてもおかしくないだろう。
コレで戦車を作れば重量が5分の1になる。とんでもなく速く走るだろう。


皆さん、ご機嫌よう。





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